ポウィス・カッスル&ガーデン Powis Castle and Garden
ポウィス・カッスル&ガーデンは私の知る範囲で最大最高のイタリアン・テラス・ガーデンだ。
しかも、このガーデンスタイルが大好きなのだ。期待に胸を膨らませてやってきた。
この城はウェールズの他の多くの城がウェールズを征服したイングランド人が建てたのと異なり、イングランドに征服される以前のウェールズ中央部の小王国であった
Powisの城として西暦1200年頃に始まり、17世紀の改造を経て今に残るものだ。1832年にはビクトリア女王が訪れているという。
先ずは中庭(Courtyard)に入る(写真下左2枚)。ペガサスの背のニンフは5年前と同じくラッパを吹いている。歌と踊りが好きなのだ。
レセプションで会員証を提示し入場すると2段目のテラスだ(写真下右から2枚目)。左の欄干が中庭だから、テラスの段差の大きさが分かってもらえるだろう。
イチイの刈り込みのでこぼこ(Lumpy)加減がなんとも良い。
下右は元は彫刻を置いてあった壁がん(Niche)だが、今はフクシアが植えられた大きなコンテナが置かれている。その下の銀葉は城の名を冠した
アルテミジア(Artemisia)・ポウィス・カッスルだ。アサギリ草に似た蓬科の植物だ。通路のベンチは一方の足にキャスターが、反対側に取っ手が付いていて
一輪車のように押して移動できるアイディアが面白い。
このガーデンは1680年から始まったという。10.5ヘクタールというから東京ドーム2つ以上の広さになる。テラスは4段とも5段とも表現されている。 城の前庭を1段目とすれば5段であるし、次の段から数えれば4段だ。イギリスでは18世紀に吹き荒れたケーパビリティー・ブラウン(Capability Brown)が提唱した 英国式風景庭園(English Landscape Garden)のブームによって多くのテラスガーデンやフォーマルガーデンが壊されたのだが、 ここは余りに急な斜面が幸いしてそのブームに巻き込まれないで17世紀のスタイルが残っているのだ。
写真上左は2段目のテラスから一番下の"Formal Garden"、"Fountain Garden"、"Croquet Lawn"を見下ろしている。
上中2枚は3段目の吟遊詩人(Minstrels)2体と踊り子(Dancers)2体の彫像だ。こちらも歌を口ずさみ、踊り出したくなるような陽気な雰囲気に包まれている。
上左から2枚目に4段目の温室(Orangery)が写っている。
写真下左は3段目のテラスから城を見上げる。2枚目は3段目のテラスから東方向、ウェールズの山並みを望む。
右から2枚目は3段目のテラス、右は4段目のテラスの豊かな植栽のボーダー。
写真下左は4段目のテラスの美しい欄干。コンテナの植栽は赤いフクシア、黄色のカリブラコア、青いロベリアだ。どうしたらこんなに大きくなるのだろう。
4段目はオレンジを育てた温室があるので"The Orangery Terrace"と呼ばれる。19世紀には王族・貴族は競ってプランツハンターを世界に送り込み、
珍しい植物を取り寄せ、それを披露することで自らのステータスを誇ったのだ。その一例がオレンジを温室で育て晩餐会で振舞ったのでその温室をオランジェリーと呼ぶ。
したがって、このテラスは19世紀に改造されたということだ。その温室は下方の彫像の写真に写っている。
左から2枚目は5段目のボーダーだ。右手下には芝の広場が広がっている。
5段目のボーダーを北東に進むと果樹を植栽したフォーマルガーデンがあり、その先にハーフティンバーのコテージが見える。 1908年に建てられた"The Bothy"だ(写真上右から2枚目、下左)。 花に囲まれ極めてロマンチックなコテージだ。前回訪れた時にはアフタヌーンティーを楽しむ人が見えたが、今日は静まり返っている。 調べたところ、このコテージはナショナル・トラストによって貸し出されているのだ。ハイシーズンの予約は難しそうだし、 二人だけでステイするのは勿体無い気もするが、朝夕の入場者のいないこのガーデンを独り占めできる魅力は捨て難い。近い将来チャレンジしてみよう。
上左から2枚目はコテージに隣接する建物でオフィスになっているようだ。上右から2枚目は"Fountain Garden"にあるゲート。
門柱の上にウェールズの象徴”ウェルシュ・ドラゴン”が鎮座している。
前回の訪問では孔雀の出迎えを受けたのだが、今年は見当たらない。代わりに彫像の孔雀があった(写真下左)。
フォーマルガーデンの葡萄のアーチトンネルにはたわわに房が垂れ下がっている。壁際を飾るフクシアも見事な広がりを見せる。豊かな庭だ。
この城は宮崎駿監督の名作「天空の城ラピュタ」のモデルともいわれている。真偽は分からないが、下の4枚を見たらそれと頷けなくもない。
左から、4番目のテラスから見上げた城、コテージ前の果樹のフォーマルガーデンから見上げる城、ファウンテン・ガーデンから見上げた城、
ファウンテン・ガーデンの並びにあるサンダイアルの広場から望む城。本当に美しい。
実りの秋をテーマに4枚。アーチトンネルの葡萄。真っ赤に実る林檎の先に浮かぶお城。収穫した林檎でリンゴの木の再生資金を募っている。 こちらでは、こうした不揃いのリンゴが八百屋の店先に並び、量り売りされている。
数多い彫像の中から、左は中庭のペガサスとニンフ、"Fame"と名付けられているらしい。2枚目はギリシャ神話に登場する場面でヒュドラ(Hydra)を退治するヘラクレス(Hercules)、
ヒュドラはヤマタノオロチならぬ9つの頭を持つ大蛇で頭を一つ切るとすぐに2つの頭が生えるという。背景は上述のイチイの"Tumps"(小丘)。
この庭に戻ってくるに当たり再会を楽しみにしてきた娘がいる。”鶏を頭上に掲げて弾けるような笑顔を見せている少女像”だ。
彼女の居場所は第2のテラスから秘密の階段を上った第1のテラスとの中間の踊り場だ。もちろん真っ先に秘密の階段を探し会いに行った。
今年もはじける笑顔で私に元気をくれた。通りがかった人に「この娘に会いたくて5年振りに遣って来た」と話すと
「彼女も喜んでいるでしょう」と応じてくれた。
右から2枚目はオランジェリーの前のフルート奏者の像(Statue of a flute player)。温室の中は見逃した。
温室の前だからといって何も裸にならなくとも・・・。同じテラスにもうお一人裸の方がいらっしゃいました(写真下右)。
最後に大きなコンテナの花々を。左は2段目のテラスの壁がんの赤いフクシアと赤・青のセージのコンテナ。 2枚目は2段目と3段目の階段にあったセダムの黒法師やドドナエアなど黒い葉を中心に寄せ植えしたコンテナ。 3枚目も同じ階段のフクシアを中心にした寄せ植えだ。4枚目は4段目のテラスの赤いフクシア、黄色のカリブラコア、青いロベリアのコンテナ。 5枚目はコテージの門柱の上のコンテナ。花はセンテッドゼラニウムだったと記憶している。期待通り、大満足だ。帰り道の坂も決して苦にならない。
Address | Welshpool, SY21 8RF |
Telephone | 01938 551944 |
Web Site | Powis Castle and Garden |
オープンの日・時間や入場料は Web Site あるいは
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「旅行記」もご覧ください。